秘密の地図を描こう
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何故、出撃許可が出ないのだろうか。そう思いながら、シンはミゲルを見つめる。
「そんな表情をしてもだめなもんはだめだ」
その意図をしっかりと読み取ったのだろう。彼はそう言ってくる。
「勝手に出撃するな。あちらで何とかする、と言うのがニコルからの連絡だ」
自分からだけではなく彼からも怒られていいのであれば、命令無視してもいいぞ……と続けられた。
ニコルに怒られるのはいやだ。
「……ですが……」
それでも、黙ってみているだけなんてできない。
シンはそう主張する。
「なら、余計におとなしくしていろ。今のお前たちじゃキラの邪魔をするだけだ」
きっぱりとそう言いきられた。
「……そんなに、俺たちは弱いですか?」
思わずそう言い返してしまう。
「そういう意味じゃない。あちらでは綿密にフォーメーションを話し合っている。それに異分子が入ることでリズムが崩されたらどうなるとも思う?」
そのせいでキラに負担がかかるのは目に見えているからな。そう続けた。
この言葉にすぐに反論できない。
自分達もそれは知っているのだ。
「大丈夫だって。必要なら、連絡が来る」
ザフトで協力を求められるとすれば自分達だ。そう彼は断言をした。
「あいつらもお前たちの面倒を見ていたからな。癖を知っている」
イザーク達がいない以上、それ以外選択肢はない。その言葉には少しだけ不満を覚える。だが、相手が相手だから文句を言うこともできない。
「……わかりました」
不満ではあるが、自分がまだ、彼らには追いついていないことも知っている。だから、渋々うなずいて見せた。
「レイも我慢しているんだ。先走るな」
念を押すかのように彼はそう告げる。
「はい……」
確かに、自分よりも彼の方が行きたいと思っているのではないか。そんな彼が我慢しているのなら、自分も我慢すべきではないか。
「まぁ、あいつにもその気持ちは伝わるって」
慰めてくれているのだろうか。ミゲルがそう言いながらシンの髪をなでてくれる。
そのときだ。
「失礼します」
焦ったようなレイの声が届く。
「何だ?」
ミゲルは言外に入室を促す。
そうすれば、そこにいたのはレイだけではなくルナマリアも一緒だった。
「アスランが出撃しました」
かすかに頬を引きつらせながら、ルナマリアが報告をしてくる。
「予備のグフを使用したようですが……隊長はご存じでしたか?」
さらに彼女はこう付け加えた。
「そうか……やったか」
それにミゲルはため息をつく。
「と言うことは、あの人の許可が出た、と言うことだな」
ラクス嬢も余計な事を、と彼は続けた。
「あいつのことは放っておいていい。戦場に乗り込んだら、バルトフェルド隊長が責任を持って対処してくださるそうだ」
さらに彼はそう続ける。
「撃墜コミでな」
ぼそっと付け加えられた言葉に苦笑しか浮かんでこない。
「事前に話が?」
「ニコル経由でな」
レイの問いかけにミゲルはうなずく。
「まぁ、それもあいつ次第だ」
どういう結論が出るか。楽しみにしておこう。彼はそう締めくくる。
「とりあえず、お前らは待機、だ」
この指示にシン達は従う以外はなかった。